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I know so..... I don't have the act or process of limithing something.

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朝目が覚めたら、さわやかな目覚め……とは、お世辞にも言えなかった。
敢えて言うなら、また虚ろな一日が始まるのかと、絶望だけが私の傍らにあった。


昨晩、ある親友が私に教えてくれた。


愛することは、与えられることではなく、与えることなのだと。


どこかの本もそんな事を言っていたなと考え、けれどそれが同時に正しいように思う。

愛とは意図して強請るものでも、ましてや作るものでもない。
純粋に、心からそうしたいと思うからこそ、なんの違和感もなく自然と生まれるものなのだろう。
少なくとも、私に教えてくれた彼女のその姿は、電話越しからでも簡単に想像できた。


彼女は静かに教えてくれた。


「貴方が愛しているのは、あなたが愛しているという男の身体であって、その人自身ではない」






振り出しに、戻る。

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夢を見た。
といっても、どのくらい前だったのか分からないけれど。


私は真っ白の花嫁姿だった。
相手は知らない、けれど高齢の人だった。
誰もがその結婚を祝福していた。
誰もがその結婚を賛美していた。

その人と、どうして結婚することになったのかは分からない。
けれど、その人は本当に優しくて、いつでも助けになってくれて、支えてくれた。
私を諌め、慰めてくれた。
財力もあった。人格的に優れていた。周囲からの信望も厚かった。

そう、理想的だ。
何の問題も無い。寧ろなぜ私を愛してくれたのか分からないほど、優れた、まっすぐな人。

私は真っ白の花嫁姿だった。
なのに私は、声を噛み殺して泣いていた。

何故か?答えは簡単だった。
私には、他に好きな人が……愛する人がいたから。

その人は笑って、私に「オメデトウ」と言った。
何故なら単純だ。彼にも愛する人がいるから。
彼は幸せだから。だから彼は、理想の結婚をした知人を純粋に祝福した。

私は叫びたかった。
今、ここで声を張り上げて「私は彼を愛しているんだ」と。


でもここで、私が叫べば……彼と彼の愛する人の幸せはどうなる?


だから私は、人形みたいに「アリガトウ」と笑って答えた。彼はそれを満足そうに見ていた。
けれど一人、控え室で私はずっと一人泣いていた。
声をかみ殺して、哀れな花嫁は泣いていた。



それはまるで、常の私の様だ。
本当は泣きたいのに、嫌だと叫びたいのに。
行かないで、一人にしないでと……心のどこかで、そう思っているのに。
見得を張り、虚勢を張り。
自分の本当の気持ちに気づけぬまま、失った後にようやく、その大きさに気づくだけ。
そして人知れず、誰も居ないところでその心の傷を必死で塞ぐ為に泣くのだろう。




目が覚めると、隣で男が眠っていた。
昨晩、散々私を貪った男だ。
どうせいつもの気まぐれで抱いたのだろう。
彼が私に向ける感情に暖かいものなど欠片も無いことは、既に分かっている。
だから私は彼の誘いに乗るのだ。彼は後腐れを嫌うから、こちらとしてもそれは同じ。
私が欲しいのはほんの一時的な温もりだけだし、それは彼も同じだろう。
似ていると言えば彼は違うと言いそうだが、全く違うわけでもない。

以前は彼が誘ったが、今回は私が強請った。
男なんて数多にいるが、私が強請ってまで彼を求めた理由は、気に入っている所があるからだ。
彼は眠るとき、必ず女を抱きしめて眠る。抱き枕の代わりと言ったところだろう。
それが私には心地よかった。少なくとも、起きたときの孤独な空虚感に襲われることは無い。
嫌な夢を見たと、まわされた腕と抱き寄せる腕に擦り寄って再び目を瞑った。



こんな風に、誰とでも寝る男。
軽くて後先考えず、金遣いは荒く周囲の評判も悪い。
私は、そんな男を好きになった。

同時に、素晴らしい人に好意を寄せられた。
何事にも真剣で、まっすぐで。
優しくて支えてくれて、周りからの信望も厚い……何の文句もつけられない様な、素敵な人。
なのに私は、心移りしなかった。

何故なのか、と。
最初は周囲も私の声を聞こうとしたが、次第に苛立つ声が増えてきた。


あんなにお前は大切にしてもらっていて、その気持ちを裏切るのか、と。


「好きになる」とは、そんな理由なのだろうか。
「愛する」とは、何かしてもらったからそのお返しにすることなのだろうか。






再び目を開けと、目の前に男の手があった。
頬を摺り寄せて甘えながら、ぼんやり考える。
今自分の居る部屋の、そう遠くないところに彼はいる。
きっと彼は、私がこの男とこんな事をしていることなど知るはずもなく、今日会ったときも笑顔で挨拶してくるのだろう。
ましてや彼は、この男と友人なのだ。


きっと彼を愛せたら。
こんな事をせずとも幸せだったのに。




携帯のアラーム音で、世界は急に彩を取り戻し始めた。
気だるい身体で音源に手を伸ばそうとすると、身体を覆っていた腕のぬくもりがするりと消え、音が消えたと同時に強い力で戻ってきた。


彼のあの優しさより、私はこのほんの一時的なぬくもりの方が、愛おしかったのだろうか。


そう考えると余りにも空しくて、もう一度自分を抱いた男に甘えた。
「愛する」どころか「好き」さえ知らない子供が、先に「身体」の喜びを知ってしまった……哀れな末路がこれかと、自嘲しながら。
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