I know so..... I don't have the act or process of limithing something.
夢を見た。
といっても、どのくらい前だったのか分からないけれど。 私は真っ白の花嫁姿だった。 相手は知らない、けれど高齢の人だった。 誰もがその結婚を祝福していた。 誰もがその結婚を賛美していた。 その人と、どうして結婚することになったのかは分からない。 けれど、その人は本当に優しくて、いつでも助けになってくれて、支えてくれた。 私を諌め、慰めてくれた。 財力もあった。人格的に優れていた。周囲からの信望も厚かった。 そう、理想的だ。 何の問題も無い。寧ろなぜ私を愛してくれたのか分からないほど、優れた、まっすぐな人。 私は真っ白の花嫁姿だった。 なのに私は、声を噛み殺して泣いていた。 何故か?答えは簡単だった。 私には、他に好きな人が……愛する人がいたから。 その人は笑って、私に「オメデトウ」と言った。 何故なら単純だ。彼にも愛する人がいるから。 彼は幸せだから。だから彼は、理想の結婚をした知人を純粋に祝福した。 私は叫びたかった。 今、ここで声を張り上げて「私は彼を愛しているんだ」と。 でもここで、私が叫べば……彼と彼の愛する人の幸せはどうなる? だから私は、人形みたいに「アリガトウ」と笑って答えた。彼はそれを満足そうに見ていた。 けれど一人、控え室で私はずっと一人泣いていた。 声をかみ殺して、哀れな花嫁は泣いていた。 それはまるで、常の私の様だ。 本当は泣きたいのに、嫌だと叫びたいのに。 行かないで、一人にしないでと……心のどこかで、そう思っているのに。 見得を張り、虚勢を張り。 自分の本当の気持ちに気づけぬまま、失った後にようやく、その大きさに気づくだけ。 そして人知れず、誰も居ないところでその心の傷を必死で塞ぐ為に泣くのだろう。 目が覚めると、隣で男が眠っていた。 昨晩、散々私を貪った男だ。 どうせいつもの気まぐれで抱いたのだろう。 彼が私に向ける感情に暖かいものなど欠片も無いことは、既に分かっている。 だから私は彼の誘いに乗るのだ。彼は後腐れを嫌うから、こちらとしてもそれは同じ。 私が欲しいのはほんの一時的な温もりだけだし、それは彼も同じだろう。 似ていると言えば彼は違うと言いそうだが、全く違うわけでもない。 以前は彼が誘ったが、今回は私が強請った。 男なんて数多にいるが、私が強請ってまで彼を求めた理由は、気に入っている所があるからだ。 彼は眠るとき、必ず女を抱きしめて眠る。抱き枕の代わりと言ったところだろう。 それが私には心地よかった。少なくとも、起きたときの孤独な空虚感に襲われることは無い。 嫌な夢を見たと、まわされた腕と抱き寄せる腕に擦り寄って再び目を瞑った。 こんな風に、誰とでも寝る男。 軽くて後先考えず、金遣いは荒く周囲の評判も悪い。 私は、そんな男を好きになった。 同時に、素晴らしい人に好意を寄せられた。 何事にも真剣で、まっすぐで。 優しくて支えてくれて、周りからの信望も厚い……何の文句もつけられない様な、素敵な人。 なのに私は、心移りしなかった。 何故なのか、と。 最初は周囲も私の声を聞こうとしたが、次第に苛立つ声が増えてきた。 あんなにお前は大切にしてもらっていて、その気持ちを裏切るのか、と。 「好きになる」とは、そんな理由なのだろうか。 「愛する」とは、何かしてもらったからそのお返しにすることなのだろうか。 再び目を開けと、目の前に男の手があった。 頬を摺り寄せて甘えながら、ぼんやり考える。 今自分の居る部屋の、そう遠くないところに彼はいる。 きっと彼は、私がこの男とこんな事をしていることなど知るはずもなく、今日会ったときも笑顔で挨拶してくるのだろう。 ましてや彼は、この男と友人なのだ。 きっと彼を愛せたら。 こんな事をせずとも幸せだったのに。 携帯のアラーム音で、世界は急に彩を取り戻し始めた。 気だるい身体で音源に手を伸ばそうとすると、身体を覆っていた腕のぬくもりがするりと消え、音が消えたと同時に強い力で戻ってきた。 彼のあの優しさより、私はこのほんの一時的なぬくもりの方が、愛おしかったのだろうか。 そう考えると余りにも空しくて、もう一度自分を抱いた男に甘えた。 「愛する」どころか「好き」さえ知らない子供が、先に「身体」の喜びを知ってしまった……哀れな末路がこれかと、自嘲しながら。 PR この記事にコメントする
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