得て、失ったもの

新しい恋は、たしかにあたしを変えて。
今までとおなじものでさえ、きらきら輝いて見えた。

あぁ、世界は気持ち次第でこんなに変わるんだ。

あの人に会える、ただそれだけで頑張れた。
幸せになれた。

でも夢は叶わなくて、現実はそれを許してはくれず。

泣いてわめいて、でも何より無力な自分が悔しくて。
落ち込むあたしに、更においうちがきて。

世界で一番不幸だなんて思わない。
ただ、どうしてこんなことになったのかがわからなくて。
闇雲に、でも必死に生きようと思った。

そんな時、あのひとが目の前に現れて。
会いたかったあなたが、目の前に居て。
手をさしのべたら、触れられる場所にいて。
隣に座った体温が、妙に心くすぐって。

幸せだった。もうこれ以上ないほど。


でも人は、どうしてこんなに貪欲なんだろう。


もう一度、あいつに会った。
会うなり、あいつはあたしに来るようにいった。

ﾀﾞﾒだと思ったのに。もうあたしはあの人が好きなのに。

触れる唇が、溶け合うキスが。
心はあのひとが好きでも、身体はまだ貪欲にあいつを求めていて。
身体をなぞる指が、妙に心地よかった。

でも、あいつにとってあたしは”モノ”だから。



あれから、あの人に一度会った。
でもなんだか、更に遠くなった気がして。

分からない、わからないあたしのココロ。